ふたり
俺は弁当を膝の上から廊下の床へと置いた。
衛生面は気にしていられなかった。
「てめぇっカオル!
お前俺の話聞いていたのかよ!」
「聞いていたよ全部!」
「俺はヒメとの関係が崩れるのが嫌で、想いを告げたくても告げられねぇって言ったよな!?
それなのにお前が出した解決策は、ヒメに想いを告げろ、だと?
俺の嫌な気持ちはどこ行ったんだよ!」
「じゃあ聞くけどなマサキ。
ずっと壊れたくないからって逃げてばかりで良いのかよ」
俺の怒りが、静かに沈んでいく。
「お前が壊れたくないって感じる気持ちの名前、教えてやるよ。
それは恐怖心だよ。
恋愛経験はねぇけど、わかる。
怖くって1歩を踏み出せないってのは、恋愛ではあるあるだ。
だけど怖いからこのまま現状維持で良いのか?
自分の気持ち押し殺したまま、ヒメのタイプじゃないからって逃げて、ヒメが好きな人と付き合っても良いのか?
気持ちだけ伝えたいなら告げろ」
「はあ」とわざとらしく大きな溜息をつくカオル。
俺は暫く身動きが取れなかった。
「あと、僕が感じた疑問、言っても良いか?」