ふたり








そして、俺の母親譲りの黒髪を梳いた。





「その口調もどうにかしなさい。
女の子ですから、“俺”というのは止めた方が」


「そう言う飛世だって、自分のこと男なのに“わたし”って言うだろ」


「男が“わたし”というのは良いのですよ。
これから先も上司などに向かっては“わたし”と言うのですから。

しかし女の子が自分を“俺”と言うのは認められる社会になっていませんよ」


「じゃあ俺が第一人者になる!パイオニアだ!!」


「いけません真咲」




小さく音もなく、飛世は俺の額にキスをした。

一気に下がりかけていた体温が上がる。





「……お前は俺だけの女になるんだろ?
男みてぇな格好や口調しねぇで、彼女らしく振る舞ってみろよ」


「ひ…飛世っ……!」


「頑張ってその口調や格好直して行け。俺が手伝うからよ」


「……ひっ…飛世ぇ……!」





ぎゅっと飛世は、俺――じゃない、あたしを抱きしめた。

いつも自分を“わたし”と言い、女のあたしよりも丁寧な口調をする飛世。

あたしよりも、男の飛世の方が、立派な“女”だった。





だけど…何でだろ。

今の飛世は、男っぽく見える。






「大好きだよ…飛世……」





飛世が男っぽく見えると、

何だかあたしも女の子になっちゃうみたい……。







< 28 / 56 >

この作品をシェア

pagetop