ふたり
俺は目を閉じた。
瞼の裏に浮かぶのは、初めて真咲と出会ったあの日。
6歳だった小学2年生の秋。
中途半端な時期に、俺は生まれ育った町からこっちへ引っ越してきた。
見知らぬ土地。
見知らぬ人。
生まれ育った町で感じたトラウマから、俺は友達が出来ず、転校先の小学校で孤立していた。
クラスメイトの中には、何を話しかけても話さない俺を、からかう奴らもいた。
『おまえしゃべれねーのかー?』
『なにかいってみろよー』
『おばけだー!』
『おーばーけ、おーばーけ!』
先生もクラスメイトも、何も言わなかった。
ただ俺は、教室の片隅で1人静かに、何も言い返さず唇を噛んで耐えていた。
家族には言えなかった。
また…心配かけてしまうと思ったから。
帰り道、通学路の途中にある公園で1人、泣くことも少なくなかった。
『……何泣いてんの?』
話しかけてきたのが、
海野真咲(うみの・まさき)だった。