ふたり
真咲は何も言わず、ただ泣きじゃくる俺の隣に座り、理由も聞かず、
俺が泣く度不思議とやってきて、頭や背中を撫で、泣き止むまで待っていてくれた。
真咲のことは、知っていた。
隣のクラスで、学年で1番有名な、ガキ大将。
女なのに化け物みたいに強い、と評判だった。
『名前、そういえばなんて言うの?』
俺は言いたくないと黙って首を振った。
その日も、クラスメイトに宿題のプリントを破られ、泣いていた。
あの時期は本当に、毎日泣いていた。
今思えば、涙って本当にいっぱいあるんだな。
『あたしは海野真咲。よろしく』
『何されたの?』
『誰にされたの?』
『キミは何年生なの?』
一切何も言わなかったけど、真咲はしつこいぐらい俺にいくつもの質問をぶつけてきた。
いつしか、質問だけでなく、真咲の学校生活のアレコレを聞くようになっていた。
内容は殆(ほとん)ど、ガラスを割ったや、ランドセルを家に忘れて学校に行ったなど、俺からは信じられないものだった。
『……茅野…飛世……』
3ヶ月ほど真咲と公園で会い続けた頃。
さすがに悪くなって、俺は名前だけ告げた。