ふたり








『なぁヒメ』



小学3年生に進級した頃。

いつもの公園のベンチで、真咲が口を開いた。




進級しても、俺は変わらず、
男子たちにからかわれて、何も言い返さずにいた。

放課後涙をこぼすことも変わらず、
相変わらず隣に来る真咲に慰めてもらい、自宅へ帰っていた。




俺の外見も中身も何も変わっていないけど。

真咲の内面は明らかに変わっていた。

前より、男らしさが増した気がした。

自分のことは“あたし”と言っていたけど、“俺”と言いだしても可笑しくなかった。

毎日のように、どこかに1つ、絆創膏が増えていた。





不思議と怖いと思わなかったのは、

――きっと真咲の優しさを知っていたから。







『ヒメはどうして、何言われても言い返さないの?
悔しいと思わないの?』


『…………』




真咲の前では、少し話せるようになって来たけど。

俺は涙で揺れる視界を、地面へ向け、膝の上で拳を握った。







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