ふたり








1時間ぐらい、沢山(たくさん)のティッシュを消費した俺は、ハッと気がついた。

俺が家で、絶対に涙を流さなかった理由を、思い出したから。




『お姉ちゃん違う!わたしはっ……』


『飛世、何があったの?お姉ちゃんに言ってごらん』


『違うのお姉ちゃん!わたしは、いじめられてなんていないっ!!』


『嘘つかなくて良いんだよ、飛世。
お姉ちゃんに素直に話してくれるよね?飛世』


『違うの!道で転んだだけなの!!』


『じゃあどこ怪我したの?手当てしてあげるから見せて』


『……ッ』


『嘘なんだね?
良いんだよ飛世、我慢しないで』


『いじめられてなんて、いないもん……』


『我慢しないで良いんだよ、飛世』




俺は必死に言い返した。

だけど姉は、俺がいじめられたと信じたままだった。




そして、夕ご飯の時。

家族揃ってご飯を食べていると。






『飛世が、今日泣きながら帰ってきたの』





姉が、俯きながら重い口を開いた。






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