ふたり
両親は、食べていた手を止めた。
そして、同じく止まった俺を見た。
『本当なの?飛世』
『大丈夫か?怪我していないか?』
『いじめられてなんて、いないもん』
『ずっとこの調子で言うのよ。
ねぇパパ、ママ。
また考えた方が良いんじゃない?』
『でも――飛那(ひな)は良いの?』
『良いよ。
飛世が辛い方が嫌だもの』
『……じゃあ、手続きしましょうかね』
『お母さん違う…わたしいじめられてなんていない…』
『今まで辛かったわね、飛世』
『ごめんな飛世、気がつかなくて』
静かに、皆して夕飯を食べ始める。
『――転校なんてしたくないッ!』
初めてそこで俺は、家族に向かって叫んだ。
そして、家を飛び出した。