ふたり







『はぁ…はぁ……はぁ………』




家を飛び出した俺は、公園に来ていた。

そしていつも、真咲と並んで座るベンチに腰かけた。





今の学校では、前の学校みたいにいじめられてはいなかった。

だけど、口調をからかわれたりした。

口調を直せば良い話だけど、当時の俺は“俺”と言おうとすると、喉がしまったみたいに声を出せなくなる。

敬語以外の言葉を言おうとしても、同じことになった。





真咲と、離れたくない。

いじめられてなんて、いないのに。

過去いじめられ、怪我を負った俺に、両親と姉は過保護になっていた。

俺がいじめられる限り、いつまでも転校を決意するだろう。





『……真咲………』




恋愛感情じゃなくても、大事な人。

俺はその名を、泣きながら呟いた。





『……ヒメ、見つけた』





俺は涙でグシャグシャになった顔を上げた。







『……ま…さ…き……?』






< 39 / 56 >

この作品をシェア

pagetop