ふたり
自宅や高校の近所には、美術が学べる大学がない。
ヒメの進路を聞いたことはないけど。
もし…遠くの大学へ行ってしまったら。
俺はどうすれば良いのだろうか?
今の“幼馴染”と言う近くて遠い関係を、どうしたいのだろうか?
「マサキ」
ぼっと自分の世界で考え込んでいると。
ヒメが俺の隣でニッコリ笑っていた。
「ノート写し終わりましたか?」
「…やべぇ、まだだ」
「そうですか。
早めに終わらせてくださいね。
貸すのはマサキだけではないのですよ」
「すまん!早めに終わらす。もう少し待ってくれ」
「急いで書いて、字が汚いと返却されないよう気を付けてくださいね」
「あっ!
それってこの間の国語の課題の時だろ?
僕まだ覚えているよ!」
「カオルさんの方がマサキより頭良いですね」
「ヒメもカオルもうるせぇんだよー!
早めに、そして綺麗に終わらせてみせるからな!
ヒメ!覚悟しておけ!!」
「……何に覚悟するのでしょうね?」
俺は急いで鞄から借りたノートと自分のノートを取り出し、
ガリガリとシャープペンシルを走らせた。