ふたり
ま、まぁともかく。
俺は『一緒に行く』と言う真咲を家まで送り届け、
1人家に帰り、
両親と姉に転校したくない気持ちを伝えた。
最初は反対されたけど、最終的にはこのまま滞在することを許してくれた。
『やーい、おばけおばけー!』
『なにかはなせよー、おばけー』
いつものように、男子に囲まれた。
俯いていた顔を上げると、視界に真咲が入った。
それだけで、勇気が湧いた。
『……もう、俺に関わらないでくれますか』
敬語は抜けなかったけど、“わたし”ではなく、俺と言えた。
真咲の、お蔭で。
『やったじゃんヒメ!さすが俺のヒメだ!』
見ていた戦隊ヒーロー番組に影響され、真咲の一人称はこの頃から“俺”に変わった。
俺よりもずっと男らしい真咲と一緒に行動することで、
俺は“俺”ということに支障を来すことはなくなった。
『……ありがとう、真咲』
自分のことのように喜んでくれる真咲に恋愛感情を抱いたのは、この頃。
真咲を、幸せにしたい。
ずっと一緒にいたい。
真咲といる度、俺はそう想い始めた。