ふたり
☆☆☆
「飛世お待たせ、ご飯よ」
「はーい」
「飛那も呼んでちょうだい」
「わかったー」
自宅から大学に通う姉の部屋へ行き、ノックをする。
姉はすぐに出てきた。
「お姉ちゃん、ご飯出来てる」
「あら、そう。お腹空いたわー」
階段を先に降りる姉に、俺はその背中に話しかけた。
「今日から、真咲と付き合うことになった」
「えっ?本当に?」
「真咲から告白してもらったんだけどね」
「良かったじゃない、おめでとう!
あとでメールしておかないと」
真咲とアドレスを交換している姉は、嬉しそうに鼻歌を歌った。
だけど、歌うのを止め、振り返った。
「良かったわ、飛世が幸せそうで」
姉には本当に、迷惑をかけた。
今でも引っ越す以前の友達と付き合っているみたいだけど。
誰とでも仲良くなれる姉に、転校は俺の想像以上に辛いものだっただろう。
俺を憎んでも可笑しくないのに。
「……ありがとう、お姉ちゃん」
俺はニッと笑い、姉と共にリビングへ向かった。