ふたり
『そういえば真咲。
お隣の飛世くんと仲良くしているの?』
家に帰ってクッキーを食べている時、母親に言われた。
俺は首を振り、『ヒセって誰?』と尋ねた。
『この間公園で一緒に話している所、向かいのおばちゃんが見たそうよ?』
最近公園で一緒に話したのは――ヒメだ。
『ヒメのこと……?』
『あらやだ。
真咲、飛世くんよ。
ヒメなんて言っちゃ可哀想でしょう。
飛世くんは男の子なんだから』
初めてヒメではなく飛世といい、女子ではなく男子だと知った。
だけど、俺の中の男子とは明らかに違う見た目に中身。
クッキー片手に、俺はその場に放心した。
俺は次の日も、ヒメに会いに公園に行った。
学校内では、何故か話しかけられなかった。
ヒメから、来ないでオーラが溢れているように見えたから。
『飛世って言うの?名前』
隣でいつものように泣きじゃくるヒメに聞くと。
『茅野…飛世、です……』
涙で真っ赤になった瞳を、俺へ向けてきた。