ふたり
『男子なの?』
『……はい』
こくり、と控えめにヒメは肯定した。
自信満々に、ではなく。
思えばこの時から、俺はヒメに対し、何かあったと感じた。
だって、普通性別を間違われたら、怒るはずだ。
なのに、ヒメは絶対に怒らず、責めたりしなかった。
『……あたし、女子だよ』
『……知ってます』
『だけど、ヒメのこと、守りたい』
『…………はい』
『ヒメって呼んで、怒らないの?』
『……ヒメの方が、似合いますから』
ヒメは一旦泣き止んだが、再び洪水のように泣きだした。
俺はそっと、男子にしては細い腕に自分の腕を絡めた。
『わたしは…ヒメで、十分です……』
嗚咽交じりに掻き消されそうなほど小さく呟いた言葉に、俺は違和感を抱いた。