ふたり
1人で帰れると言うヒメに送り届けてもらった俺は、自宅へ帰った。
両親も兄貴も、勝手にシチューを食べたことや、勝手にヒメを探しに行ったことは怒られなかった。
むしろ、ヒーローだ!と褒められた。
俺は母親とふたりきりになり、ヒメの転校前のことを知った。
ヒメが自分の口調によって、いじめに合ったことを。
いじめられてない姉が巻き込まれたことを、気にしていることを。
『……平気だよママ。
ヒメのことは、あたしが守るから』
『真咲……』
『あたし、ヒメが好き。
好きな人は、頑張って守るんだから!』
母親にとって、その好きだと言った俺の気持ちは、単なる子どもの好きだと思っただろう。
だけど、俺が言った好きは、間違いなく、愛してると同じ好きだった。
『ヒメ!おめでとう!言い返せたね!』
『グスッ…怖かったですぅ……』
『いつもの公園行こう!』
『はいっ!』
初めてヒメが言い返した瞬間を見た時は、自分のことのように嬉しかった。
ヒメは怖くって泣いていたけど、嬉しそうに笑っていた。
『真咲のお蔭だよ、ありがとう』
今まで俺に対して敬語口調だったヒメの、初めてのタメ口だった。
心を許してくれたのだと、その日は俺も一緒に泣いた。