ふたり
告白してフラれたら、絶対距離が出来る。
もう元の関係には戻れない。
だけど、俺はそれを求める。
幼馴染なんて、本当は歴史が長いだけで、脆いんだ。
言葉1つで、簡単にガラガラと音を立てて崩れる。
――だったら自分から壊してやる。
正直怖ぇよ。
告白したらしたで、元の関係に戻りてぇって願うかもしれねぇ。
だけど――ヒメの隣にこれからもいてぇんだ。
「ごめんなさい、呼び出して」
聞き慣れた声がする。
美術部の1年生で、ヒメにやけに懐いている後輩。
ヒメも1人っ子だからキョウダイが出来たみたいと喜んでいる。
ヒメと後輩がいたのは、人通りの少ない1階の廊下だ。
音楽室や理科室など移動教室ばかりが集まっていて、
昼休みが始まり終わるまでの間、滅多に人は通らない場所。
…良い場所見つけたじゃねぇか、と素直に感心した。
「ヒメ先輩のことが好きです、付き合ってください」
緊張なのか震えた声が、聞こえる。
ふたりから見れば死角の位置に俺は立っている。
1歩踏み出したり声を出したりすれば、絶対にバレる位置。
ふたりの顔は見えないけど、
後輩の顔が真っ赤だろうと言うことは予想がついた。