『 忘れかけてた恋の色 』~ 短編 2部作~
①
肌寒さの残る3月の夜。なんだかまだ春が遠く感じてしまう。昼間はあんなに暖かかったのに…。
社会人になって8年。いつの間にか『中堅』と呼ばれるようになった。一人ぼっちの部屋に帰ると、決まって知らないうちに溜め息が零れる。
魚住:「…あ、またやっちゃった」
最近では独り言も増えてきた。30代って、もっと『大人で優雅な感じ』だと思っていたのに…。