御曹司と愛され蜜月ライフ
◇ ◇ ◇
「はぁ……」
ゆうべ録画していたドラマを観終わった私は、無意識にため息をついた。
リモコンを操作して、テレビの電源を落とす。暗くなった画面から視線を外し、お気に入りのビーズソファーに深く沈んだ。
近衛課長が隣りの203号室を出て行って、もう1ヶ月近くなる。
秋の名残りを感じていたあの頃から、季節はもうすっかり冬へと移り変わっていた。朝晩の冷え込みが厳しく、日曜の今日は比較的さわやかな晴れ空とはいえ、まだ午前中の今室内でもヒーターをつけて過ごしている。
課長と私が、隣人ではなくなって。それでもあたりまえのように、時間は流れていて。
たまに鳴るスマホのメール受信音にも、最近ようやくいちいち期待してしまうことがなくなって来た。
会社でたまに見かける近衛課長は、相変わらず忙しそうだ。わざわざ話しかけたりはしないけれど、見た感じ元気そうではあるから、きちんと食事と睡眠はとれているようでこっそり安心している。
そう、それだけだ。私と課長の間にあったものは、その程度のつながり。
同じアパートの隣人でなくなった今、私と彼をつなぎとめるものは何もない。私は勝手に課長のことをすきになってしまったけれど、それを本人に伝えようとも、どうにかなろうとも思わないし。
……どうにかなりたいなんて、おこがましいことは思えない。だってあの人は、本来雲の上の人だったんだもん。私みたいな一般人が、近付いていいような方じゃないんだ。