御曹司と愛され蜜月ライフ
立ち上がった課長が、花束に顔を埋めるようにして泣きじゃくる私の肩にそっと触れた。



「ほら卯月、泣いてばっかりいないで。……返事を、聞かせてくれないか?」



ひく、と呼吸を飲み込んで、彼を見上げる。

やっぱり、課長は笑っていた。この顔はきっと、私の答えに気付いてるはずだ。

それでも、彼は私から答えを引き出そうとしている。私の言葉を、欲しがっている。


震える下くちびるをきゅっと噛みしめて、濡れた瞳を彼のものと合わせた。



「わ……私で、いいんですか……?」



何も持っていない。重すぎる荷物を背負う課長にとってきっと何の得にもならない、私で。

小さく弱々しい、不安でいっぱいの問いかけ。

そんな私の弱気を吹き飛ばすような力強い眼差しで、課長が大きくうなずいた。



「きみがいい。俺は、きみじゃなきゃ駄目なんだ」

「──、」



今度はもう、迷わなかった。

その首元に手を伸ばし、ほとんどぶつかるようにして抱きつく。

課長はよろけることもなく、そんな私を広い胸に受けとめてくれた。



「わ、私、なんにもないのに……った、ただの、弱虫なのに……っ」

「弱虫だろうが干物だろうが、俺にはきみが必要だ。この1ヶ月間、早くこうして抱きしめたくて仕方なかった」



強い力で私を抱きしめながら、課長が肩口で息を吐く。

その吐息が、本当に心の底から安堵しているようだったから。私は溢れる涙を止められない。
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