御曹司と愛され蜜月ライフ
月曜の朝の出勤時に鉢合わせてしまってから、このアパートで近衛課長と顔を合わせてはいない。

本人が言っていたように、私には普段より1時間も早いと思っていたあのタイミングが、彼にとっては通常の出勤時間だったらしく。

朝は私が起き出す頃に隣りの玄関のドアの音が聞こえ、逆に夜は私よりもずっと遅い時間に帰って来ているようだ。

まあ、営業ってみんなそんな感じなんだろうな。朝はともかく、あの部署の人たちは毎日遅くまで残ってるみたいだし。

顔を合わせることがなくてほっとしているような、それも逆にこわいような。

あー、私振り回されてる。乱されてる。私はただ自由気ままに暮らしたいだけなのに……。


今度は大きなため息を吐いて、コップをシンクに置いた。

顔を洗って歯を磨く。それが済むと、テレビのワイドショーをつけてから冷蔵庫の中を覗いた。

あと2時間ガマンすればもうお昼だけど、どうせ今日も外出の予定なんてないからいつ食べたって同じだ。

ゆうべの晩ごはんの残り物と、あとは冷凍ごはんのストックがある。味噌汁だけ作って、ブランチは和食だな。


流し台の上にある棚から片手鍋を取り出したそのタイミングで、突然大きな音が聞こえたからびくっと肩をすくめた。

また、隣りの──近衛課長の、部屋から。

だけど今度は、さっきの比じゃない。『ボンッ!』って、何かが爆発するような、かなり大きい音。


……え? 課長、何やってんの?

とりあえず鍋を電気コンロの上に置き、静かに耳をすましてみる。

大きな音はもうしない。というか、さっきの爆発音以降シーンとしていて人が動いている気配もない。
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