御曹司と愛され蜜月ライフ
……ちょっと。ちょっとちょっとちょっと。
完全に怪しい人なのはわかってるけど、近衛課長がいるはずの203号室側の壁にぴったりくっついて再び耳をすます。
だけどやっぱり、物音は聞こえなくて。代わりに私の心臓が、バクバクと大きな音をたて始めた。
え──うそ。もしかして、課長になんかあった?
ワンルームの部屋の中でひとり床に倒れる近衛課長の姿を想像してしまって、私はあせる。
ど、どうしよう、こっちから壁叩いてみる? いやそれより、一刻も早く様子を見に行くべき??!
相変わらずの自分のだらけきった格好を気にする余裕もなかった。
もつれそうになる足で玄関に向かい、クロックスをつっかける。
まずは大家さんに連絡するべきかとも思ったんだけど、とにかく課長に声をかけてみようと部屋を飛び出した。
203号室のドアチャイムを押してみる。3秒待っても反応がなかったから、今度はこぶしで直接ドアを叩いた。
「課長? 近衛課長、いますか??!」
ドンドンと強くドアを叩く。沈黙が長ければ長いほど、私の中で悪い想像が広がっていく。
けれどもそれは、ようやく部屋の中から物音が聞こえたことで静かに霧散した。
音の正体はフローリングの床をスリッパが踏みしめるものだ。足音はだんだん近付いてきて、鍵がまわされた後内側からドアが開かれた。
「……卯月か? どうした?」
逆にそう訊ねて来た部屋の主の表情が、いつも会社で見かけるものと何ら変わりがなかったから。
自分の頭の中に浮かんでいた光景が、ただの取り越し苦労だってわかったから。
思わず身体の力が抜けてしまって、私はへなへなとその場に座り込んだ。
完全に怪しい人なのはわかってるけど、近衛課長がいるはずの203号室側の壁にぴったりくっついて再び耳をすます。
だけどやっぱり、物音は聞こえなくて。代わりに私の心臓が、バクバクと大きな音をたて始めた。
え──うそ。もしかして、課長になんかあった?
ワンルームの部屋の中でひとり床に倒れる近衛課長の姿を想像してしまって、私はあせる。
ど、どうしよう、こっちから壁叩いてみる? いやそれより、一刻も早く様子を見に行くべき??!
相変わらずの自分のだらけきった格好を気にする余裕もなかった。
もつれそうになる足で玄関に向かい、クロックスをつっかける。
まずは大家さんに連絡するべきかとも思ったんだけど、とにかく課長に声をかけてみようと部屋を飛び出した。
203号室のドアチャイムを押してみる。3秒待っても反応がなかったから、今度はこぶしで直接ドアを叩いた。
「課長? 近衛課長、いますか??!」
ドンドンと強くドアを叩く。沈黙が長ければ長いほど、私の中で悪い想像が広がっていく。
けれどもそれは、ようやく部屋の中から物音が聞こえたことで静かに霧散した。
音の正体はフローリングの床をスリッパが踏みしめるものだ。足音はだんだん近付いてきて、鍵がまわされた後内側からドアが開かれた。
「……卯月か? どうした?」
逆にそう訊ねて来た部屋の主の表情が、いつも会社で見かけるものと何ら変わりがなかったから。
自分の頭の中に浮かんでいた光景が、ただの取り越し苦労だってわかったから。
思わず身体の力が抜けてしまって、私はへなへなとその場に座り込んだ。