いい人に恋してます。


「ごめんね文乃、待った?」

「ううん、大丈夫だよ。」


集合時間の5分前にも関わらず律儀な同期の佐伯優子(さえき ゆうこ)は、息を切らしながらこの居酒屋、海坊主へとやって来た。


「ごめんね。今回の同期会は私が幹事なのに。」

「仕事だったんだからしょうがないよ。ていうか、集合時間の5分前だよ?謝る必要なんてないよ。」


未だに申し訳なさそうにしている優子に飲み物のメニュー表を渡しながら慰める。


「あれ?西川君と一緒じゃなかったんだ?」

同期一温厚で優しい西川君と姉御肌な優子は、入社して間もない頃付き合い始めた。


見た目からして草食系男子の西川君が、短期間の間にどうやって優子のことをしとめたかは分からないが、お互いを思い合っている二人はすごく素敵なカップルで、憧れている。


「雅也もまだ仕事残ってるんだって。
でも、もう少ししたら切り上げてくるって、さっき言ってた。」

「そっか。皆忙しいね。柏木さんも少し遅れるってLINEが入ってた。」

「じゃあ、さきに始めとこうか。」


悪びれもせず優子はにっこり微笑みながら店員さんに生を2つ注文した。

さっき折角メニュー表渡したのに、目も通さずに決めたな。
まあ、いっつもお互い最初はビールだからなんの問題もないのだけど。

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