いい人に恋してます。
ガラガラーー。
「お、もうやってんのか。早いな。」
「あ、柏木さん!お疲れさま。」
私たちの手にあるジョッキを羨ましそうに眺めながら入ってきたのは同期で唯一年上の柏木さんだ。
平均より高めの身長で、しっかりとした肩幅が男らしい印象を与える所詮イケメン。
「柏木さんもビールでいい?」
「ああ。悪りい。」
優子が店員に注文している間に、柏木さんは私の隣に腰を下ろした。
優子の隣には、恋人である西川さんが座るので、この席順は何らおかしくはないが私の心臓はバクバクだ。
柏木さんの座っている右隣に私の意識が集中する。
赤くなっていることに気づかれませんように。
いつものように冷静を装いながら深呼吸する。
そう、わたくし白石 文乃27歳は、入社以来ずっと柏木さんに片思いをしています。