天使のメガネ
ある程度調節?
ここに来て又違う設定が加わるのか?
私は動揺を禁じ得ない。
「意識していないものは消えないんだな」
え?
「つまり、俺が意識したものは消えて、無意識の、そう、例えば……」
アルスはそう言うと蕎麦屋のメニューを掴んだ。
「今、俺はメニューを意識したわけ。みなみ、メガネ外してみて」
私はメガネを外した。
すると、みるみる空間からメニューが姿を消した。
違う次元に吸い込まれていくような、不思議な感じ。
メガネが無いと、アルスの声も聞こえないので、メガネを掛ける。
「ね?解った?」
私は頷いた。
「だから、椅子やテーブルや、道とか家は消えないの。
勿論、きちんと意識したら消えちゃうけどね」
何と不思議なことか。
ならば、最初から言ってくれれば良いものを。
思い返せば、アルスと手を握っていた時、全く人の目が気にならなかった。
つまり、そう言う事なんだろうか?