バンテスト魔法書の保持者
勧誘(リオウside)
鋭い声が広場に響いた。
「だまれ」
と、ただ一言。
その声は紛れもなくリューラであり、目の前にいる先輩達を睨みつけている。
殺気を纏い、誰もがその雰囲気に圧倒される。
聞く限り、クラスでは静かでほとんど注目されていないリューラ。
だけど今のリューラは‥‥‥‥
「なんだと?」
「だまれ、と言った」
静かに、しかし激怒していた。
いつのまにか繋がれていた手は離され、リューラは目の前の『敵』と認識した者しか視界に入っていない。
さて、俺は手を出すか出さないか‥‥‥
「お前、名前は?」
「Fクラス リューラ」
「リューラ?‥‥‥ほぅ、1年のワースト1が何のようだ?」
見下すようにそう言うヤマト先輩。
シンルスも、リューラが敵とみなした先輩達を鋭い目で見ていた。
カイラル先輩がシンルスを見て、小さくあいづちをつく。
「なるほど。暴走したのはあなたの使い魔ですか。契約が成功したんですね」
「はぁ!?俺はてっきり捕獲されたと思ったんだが‥‥‥つか普通、暴走した奴を使い魔にするか?」
リューラの殺気はおさまることを知らない。
今のリューラとシンルスの目は、獲物を狙う猛獣のよう。
静かで、それでいて抑えきれない激しい感情が目に浮かんでいる。
「だいたい、魔狼を使い魔にする時点で頭可笑しいんじゃ‥‥‥ッ!」
リューラの殺気が全てヤマト先輩に向く。
その鋭い瞳に捕まったヤマト先輩は言葉を無くした。
魔狼と人とは共存するのは難しい。
魔狼は人を好まないと同時に、人も魔狼を好まない。