バンテスト魔法書の保持者
誰かがそう言った瞬間、俺の周りに人が集まった。


またか‥‥‥‥


「素晴らしい魔力量でした!」


「はい、圧倒されました!」


実技授業のたび、俺は周りにおだてられる。


別に特別なことはしてない。


なにより、さきほどのはリューラだ。


ハンラルトの王子というだけで、出来ればおだてられる。


出来なければ馬鹿にされ、呆れられる。


別に、褒められても嬉しくない。


心から褒めてくれている者など、そうはいないのだから。


だが、今回は不快だ。


特別なこと以前に、何もしていないのだから。


「いや、今のは俺ではない。リューラだ」


俺がそう言えば、周りの者は首を傾げる。


そして、次に小さく笑う。


その反応に、俺の方が首を傾げた。


「レイト様、何をおっしゃっていられるのですか?」


「は?」


「ちょっと、そんなこともわからないの?レイト様はお優しいのよ」


「いや、」


「ワースト1を上げるために、あのような演出をなさったでしょう?」


「本当に素晴らしいです!」


‥‥‥呆れて、声も出なかった。


俺の言葉を聞くこともない。


‥‥‥‥‥!


いや、駄目だ。


これではリューラの評価が下がってしまうし、
リューラが傷ついてしまうかもしれない。
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