バンテスト魔法書の保持者
急いでリューラの方を見る。


いつの間にか俺から離れていた。


無表情で何を考えているかわからない。


人を押しのけ、リューラの方に向かう。


相手にする意味も必要もない。


「リューラ」


「?」 


「ありがとう。素晴らしい魔力だった。何か特別なことをしたのか?」


「(フルフル)」


「っ!ならば、あれは素のお前の魔力か?」


「(コクリ)」


あれほどの澄んだ魔力。


魔法を使った時の質は、きっと普通の者よりも高いのだろう。


「次は俺の魔力を送る。いいか?」


俺がそう言うと、リューラの表情が少しだけ動いた。


「!‥‥‥‥(フルフル)」


それから、頭を振って否定する。


これは想定していた答え。


『この南大陸で、俺はハンラルトが一番嫌いだ』


リオウの言葉が頭を過ぎる。


リューラとリオウは幼なじみ。


この言葉を言った時のリオウ。


まるで、ハンラルトを憎んでいるようだった。


「ちょっと!レイト様に失礼でしょう!?」


「そうだ!否定するなんてお前、何様のつもりなんだ!?」


リューラが否定したのを見て、周りの者が叫ぶように言った。


リューラはそれに対して何も言わず、かわりに俺と合わせていた目線を逸らした。


理由もなく、ペアを変えることは無理だろう。
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