バンテスト魔法書の保持者
廊下を通ると、ほとんどの人が私とオシレット先輩の方を振り向く。


まぁメイド服だし仕方ない、か。


見られることに不快感がでるけど。


「おっはよー♪」


そう言いながら、オシレット先輩は教室のドアを勢いよく開けた。


ほぼ全員の目がこっちに向き、思わず肩を揺らす。


ちょ、ちょっと嫌だ‥‥‥


ここに居たくない。


今すぐ逃げたいけど、できない。


グイグイと繋がれた手を引かれ、渋々教室に入る。


私の姿を見た途端、ほとんどの人が驚いた表情をした。


「ちょ、オシレット!?」


聞き覚えのある声が聞こえて、そっちを見る。


桃色の髪と瞳‥‥‥‥


学園順位第5位であり、Fクラスをとことん見下しているイチカ先輩だ。


「やーやーイチカ様、おはようございます♪」


オシレット先輩は楽しそうな口調とはうらはらに、優雅で気品のあるお辞儀をした。


腐っても貴族か‥‥‥


「ちょ、子猫ちゃん、何かすごく蔑むような目で僕を見ているのは気のせい!?」


よくわかってるじゃないか。


そういう意味を込めて、親指を立てて同意の意思を示した。


「酷い‥‥‥」


泣き真似をするオシレット先輩。


うん、ウザイ。


「オシレット!」


イチカ先輩が荒々しい態度で、オシレット先輩に近づく。


そして次の瞬間、あろうことかオシレット先輩の胸ぐらを掴んだ。
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