バンテスト魔法書の保持者
「あ、あの〜‥‥‥」


聞こえてきた声に、私は少し身体を固くした。


扉の前で、困った顔をしたイナリシア王女が立っていた。


「イナリシア王女、おはようございます」


すぐに反応したのはオシレット先輩だった。


イチカ先輩の時同様、美しい動作でお辞儀をする。


「えっと、これは‥‥‥?」


私を見ながら首をかしげるイナリシア王女。


息を吐き、全身の力を抜くように努力する。


だが‥‥‥できない。


身体が重い。


私は‥‥‥この王女を‥‥‥‥


「えっと‥‥‥あなた、リューラちゃん‥‥‥よね?
オシレットと試合をした」


重い身体が知らぬまに動き出しそうで。


気を抜けば、自分が何をしようとするかわからない。


そんな自分に恐怖する。


「えっと‥‥‥リューラちゃん?」


話しかけるな‥‥‥止めろ


消えて‥‥‥考えるな


こいつを‥‥‥





ナニモカンガエルナ!!!





イナリシア王女が私に手を伸ばす。


止めろヤメロやめろ。


「イナリシア王女」


「!」


「オシレット?」


イナリシア王女が私に手を伸ばした時、私とイナリシア王女との間にオシレット先輩が身体を挟んだ。
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