バンテスト魔法書の保持者
視界からイナリシア王女が外れ、代わりにオシレット先輩の背中が見える。


その背中を見た瞬間、何かがフラッシュバッグする。


思いだしたくない記憶。


だけど、安心できる背中。


矛盾した感情だ。


息をするのが楽になる。


私が顔を伏せると、オシレット先輩がイナリシア先輩に言った。


「僕、午前の授業サボりますんで♪」


「え?」


「は?」


突然の言葉に、イナリシア王女とイチカ先輩が目を点にした。


「じゃ、そうゆことで〜☆」


私の手首を掴み、オシレット先輩が風の早さで教室を出る。


私はただそれについていった。





*********************



オシレット先輩に引かれるがままついていき、
いきついたのは裏庭だった。


「子猫ちゃん、大丈夫?」


「?」


ついた瞬間そう問われ、私は首をかしげた。


「さっき、すっごく複雑な表情してたからさ。
それも、いいものじゃない感情のね」


真剣な表情だった。


さっきまでの張り付けたような笑みはなく、本当に心配してくれているよう。


「大丈夫で‥‥‥」


「ねぇリューラ」


「(ビクッ)」


突然名前を呼ばれ、肩を揺らす。


オシレット先輩の表情が、氷のように冷たいものになっている。
< 275 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop