バンテスト魔法書の保持者
「‥‥‥少し、待って」


‥‥‥ごめん、リオウ。


目を閉じ、私はテレパシーを送った。


(リオウ、聞こえる?)


少しの間があき、リオウの気配を掴んだ。


(リューラ?どうした?)


少し驚いたリオウの声が頭に響いた。


(リオウ、あのね‥‥‥私、過去を‥‥‥オシレット先輩に、話すことに、した)


(!)


(許して、くれる?)


私の過去を知るということは、必然的にリオウの過去も関わってくる。


すぐにはリオウから返事はなかった。


沈黙が続き、不安が心の中に積もる。


(リューラ、お前が決めたことなら、俺は否定しない)


(!)


聞こえてきたのは、強い意思が込められた言葉だった。


(リューラ、お前の好きなようにしていい。俺はそれについていく)


(リオウ‥‥‥)


(俺はお前を信じている。後悔しないように行動しろ)


(リオウ‥‥‥ありがとう)


その言葉を最後に、テレパシーは途切れた。


私はオシレット先輩に背を向けて、裏庭にある気の根本に座る。


木の幹に座り、隣を叩いた。


オシレット先輩が隣に座る。


「目を、閉じて」


私がそう言うと、オシレット先輩はゆっくりと目を閉じた。


それを確認し、私は右手でオシレット先輩の左手を手にとり、指を絡める。


それから己の額とオシレット先輩の額を合わせ、目を閉じ、私は唱えた。


「我の紡ぎし時の跡。我を作りし時を、今ここに甦らせよ〈記憶の海(メモリーレコード)〉」










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