バンテスト魔法書の保持者
「リオウ‥‥‥?」
目を開けると、ラメルがどこか心配そうな目で俺を見ていた。
「なんか辛そうだけど‥‥‥大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
辛い‥‥‥とは少し違う。
リューラからのテレパシー。
その内容に少なからず驚いていた。
リューラがもっとも嫌うもの。
それは自分の過去。
決して消えることのない深い闇を、リューラの心の中に作ったモノ。
オシレット・ダーシングは、そこまで信頼できる人物なのか‥‥‥?
少し寂しい気持ちがあるが、それと同じくらい少し嬉しい。
この学園に来てから、リューラは少なからず楽しそうに過ごしてはいる。
それと同時に、複雑な感情も抱えているだろうが‥‥‥
それは、俺も同じ。
さすがSクラスといったところか。
ここの授業は、知らないことを教えてくれる。
そして‥‥‥
「よぉ、リオウ」
「今日は早いな。セス」
顔を上げると、この学園に来てから友人となった者が目に入る。
セスフレト・マーガレル
下級貴族、マーガレル家の次男らしい。
少し長い黒に近い群青色の髪を1本にくくっている、銀の瞳をした精悍(セイタン)な顔つきの男。
因みにSクラス15位。
「いつも遅いみたいに言うなよ」
「遅いだろ。いつもはHRギリギリだ」
「遅刻しなきゃいいんだよ。遅刻しなきゃ」