バンテスト魔法書の保持者
リューラの記憶
〈彼女は、ある森に捨てられた子だった〉
「なっ!?」
気がつけば、僕はどこかの森に立っていた。
周りを見渡せば、色とりどりの草木や花。
そこで目線が低いことに気づく。
自分の手を見れば、随分と小さかった。
服装は白のワンピース1枚のみ。
緑溢れた森。
少し先に、一軒の小さなログハウスが見えた。
僕の足は、自然とそっちに向かう。
〈その捨てられた森で、彼女は森に住む1人の
天使に拾われ、育てられた〉
ガチャ
「あっ!」
僕から発せられた声は高い少女の声だった。
ログハウスの扉が開き、出てきた1人の男。
地面につきそうなほど、真っ白な美しい長い髪
こっちに向けられた瞳は美しい銀色。
極めつけの、背から生える2枚の大きな翼。
人間離れした美しい容姿の男。
背の高い、どこか神々しい男が、僕を‥‥‥少女を見て微笑んだ。
僕はそれを見た途端、地面を蹴る。
そして極自然に男の腕の中に飛び込んだ。
「ファーザー!」
「おやおや、どうしたのだ?」
意思とは関係のなく、僕は言葉を紡ぐ。
とても弾んだ声で、男に話しかける。
僕‥‥‥少女は男をファーザーと呼んだ。