バンテスト魔法書の保持者

リューラの記憶






〈彼女は、ある森に捨てられた子だった〉





「なっ!?」


気がつけば、僕はどこかの森に立っていた。


周りを見渡せば、色とりどりの草木や花。


そこで目線が低いことに気づく。


自分の手を見れば、随分と小さかった。


服装は白のワンピース1枚のみ。


緑溢れた森。


少し先に、一軒の小さなログハウスが見えた。


僕の足は、自然とそっちに向かう。





〈その捨てられた森で、彼女は森に住む1人の
天使に拾われ、育てられた〉





ガチャ


「あっ!」


僕から発せられた声は高い少女の声だった。


ログハウスの扉が開き、出てきた1人の男。


地面につきそうなほど、真っ白な美しい長い髪

こっちに向けられた瞳は美しい銀色。

極めつけの、背から生える2枚の大きな翼。

人間離れした美しい容姿の男。


背の高い、どこか神々しい男が、僕を‥‥‥少女を見て微笑んだ。


僕はそれを見た途端、地面を蹴る。


そして極自然に男の腕の中に飛び込んだ。


「ファーザー!」


「おやおや、どうしたのだ?」


意思とは関係のなく、僕は言葉を紡ぐ。


とても弾んだ声で、男に話しかける。


僕‥‥‥少女は男をファーザーと呼んだ。
< 282 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop