バンテスト魔法書の保持者
距離を取りオシレット先輩の方を振り向くと、
シンルスの足元に下敷きになっている。


「う、シ、シンルス君?反省してるから離してくれないかい?」


「‥‥‥‥」


シンルスは無言で足を退けると、私の側にやってきた。


「(なでなで)」


「クゥ〜ン」


シンルスの首もとを優しく撫でる。


すり寄って気持ちよく鳴くシンルスに少し癒された。


あ、焦った‥‥‥


なんだか、すごく何かが混み上がってきた。


‥‥‥疲れた。


「わぁ〜シンルス君、大きい身体してリューラの前では完全に子犬だね」


「‥‥‥そう?」


「うん。魔狼には見えない位穏やかだ」


何気なく名前呼びになってる‥‥‥


まぁ嫌な感じはしないし、名前で呼ばれる方がいいから何も言わないでおこう。


「魔狼、狂暴じゃない。縄張り意識、強い」


「どっちにしろ、人に対しては穏やかになるのは極希だよ。まぁ、魔狼は勘が鋭いっていうしね〜。狂暴と言われる魔狼に近づく人に、いい人が少ないだけなんだろうけど」


野生の動物なんかは特にそうだ。


勘がいいから、人を見る目は1級品だ。


いい人か悪い人かを本質的に見抜く。


いいことをする悪い人も、見抜ける。


だから、魔狼は人を嫌うのだ。


人が、魔狼を狙うから。


キーンコーンカーンコーン


「おや、チャイムだ。多分、2時間目が終わったころくらいかな?」


「(コク)」
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