バンテスト魔法書の保持者
驚いているレイトを無視して、声をかける。


「あ、デン先生、患者です」


「ん?またか?」


デン先生と呼ばれた教師は、男子寮の受付をしていた。


メガネをかけていて、背が高く白衣がよく似合っている。


スラッといた体型で、世にいう美男子。


保健室には、主に女子生徒を見るミミル先生と、主に男子生徒を見るデン先生がいる。


デン先生は姓はなく、平民出身だ。


ミミル先生は、名門タール家の娘。


タール家は代々、王族の専属医師をつとめている名門貴族。


この学園の教師は、家柄などは一切関係ない、正真正銘の実力でなれる。


平民出身だからといって、侮ってはいけない。


「おや、その子は何があったんですか?」


デン先生が、腕の中で眠っているリューラに目を向けた。


「感情が不安定になったことで、体調を崩したようです」


「そうですか。そこのベッドに寝かせなさい」


デン先生の指示を受けて、リューラをベッドの上に下ろす。


「ん、んん」


だが、リューラは腕を動かして俺の首にしがみついてしまった。


「おやおや」


「まぁまぁまぁ!」


そんな様子を見たデン先生は、何かに驚いたように目を見開き、ミミル先生といえば、目をキラキラとさせていた。


リューラの意識は戻ってはいない。


無意識に手を回しているようで、離れる様子はない。


仕方ないしに、俺はベッドに座った。


自分の膝にリューラの身体を乗せる。


リューラの顔色は大分戻っている。


「リオウ、そいつは?」


いまだ保健室にいるレイトが言った。
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