バンテスト魔法書の保持者
無表情で、表情が消えてくる。


だが、激しい感情が渦巻いているのがわかる。


うまくいけば、駒くらいには使えるか。


この人は要注意だな。


「リオウ君、その子はあなたにと‥‥‥」


「リ、オウ?」


ユカナ先輩の声を遮って、リューラが俺の名前を呼んだ。


ゆるゆると目が開かれて、俺を見る。


その瞳はいつもの金ではなく、青だ。


「起きたか。具合はどうだ?」


「ん、大丈夫。ここ、ど‥‥‥」


リューラが周りを見渡すと、言葉を切った。


理由は、ここにいる王子だ。


怖いくらいに無機質な無表情になる。


その表情は、俺でも何を考えているかわからない。


「保健室だ。そこにいるのは、俺のルームメイトのレイトだ」


「ルーム、メイト」


リューラを膝から下ろし、ベッドに座らせる。


落ち着いたようで、そこにいるのはいつものリューラだった。


「リューラさん、私はデンと申します。ここの保険医です。とりあえず、これを飲んで下さい」


デン先生から受け取ったハーブティーをジッと見つめるリューラ。


そして、確かめるようにデン先生に問いた。


「アロピーラとハクライ草?」


「おや、よくわかりましたね」


リューラを驚いて見るデン先生。


それもそのはずだ。


アロピーラはともかく、ハクライ草は殆ど無臭で、見た目だけではよくわからない。


「リューラさんすごいわねぇ。なんでわかったの?」


「ハクライ草を入れると、アロピーラの匂いが濃くなる。私、ハクライ草よく使う」
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