Under the ROSE
何が何でもセリスを護りたいリュードによって選ばれた者達の働くこの場所で、何かが起こるとは思えなかったが、用心に越した事はない。
毒見によって検査され、すでに冷たくなった料理がセリスの前に並べられる。
皿の脇に置かれた銀のスプーンを手に取り、スープ皿にそれを入れようとした時。
ドスン! と大きな物音がした。
スプーンを置いて振り返ると、隣の部屋から人々のざわめく声が聞こえてきた。
傍に控えていた召使たちが何事かと出て行き、そして慌てて戻ってきた。
「姫様! 召し上がってはいけません!」
召使が何人か飛んできて、セリスを取り囲んで辺りを警戒した。どうやら、毒見役が倒れたらしい。
扉の隙間から、大柄な男が何人もの男に担がれて運ばれていくのが見えた。
「……あの方、死んでしまったのかしら」
青ざめて小刻みに震えているように演技をして、召使たちに訊く。
「調べて参ります」
召使の1人が運ばれていく毒見役を追った。
誰かが毒を入れた。
──この警備体制の中で?
背筋に冷たいものが走り、セリスは自分を抱きしめた。