Under the ROSE
別の食事が用意されたが、さすがに何も喉を通らなかった。
リュードによって、2年前からここの警備は完璧だった。
宮への入り口は一箇所のみ。あとはすべて閉じられている。窓だって鉄格子が嵌められている。それが外された形跡はなかった。
出入りするのは全てリュードによって選ばれた者達。
外部からの侵入は困難だ。
だとすると、考えられるのは……妃殿下側への内通者がいるということ。
「一体、誰が……」
カリ、と親指の爪を噛んで、部屋の中を歩き回る。
この宮にいる者全てを疑わなくてはならないのだろうか。だとすると、周りの人間は全て敵ということになり、誰も信用出来なくなる。
「……信用、か」
思わず自嘲する。
誰も信じてなどいないくせに。そのような考えに至る自分が可笑しかった。
これから、人一人の命を奪おうという、この自分が。
同じように命を狙われることに憤りを感じるとは滑稽だ。