Under the ROSE
心の動揺を億尾にも出さず、セリスは微笑む。

「ええ……殿下をお疑いすることなどありません。あのように素晴らしい方を」

そう言うと、侍女はホッと安堵した顔になり、頭を下げて部屋を出て行った。


それを見送った後、セリスは白い薔薇を激しく睨み付けた。


この宮に誰にも咎められず侵入することが出来て、尚且つ毒を入れられる人物。


──華奢で美しいアルフォンスならば、侍女に成り代わることが出来る。


新入りだとでも言えば……皇太子の顔も良く知らない下々にはまず分からない。そして疑われる事もない。

何故ならば、ここに入れる者は皆、リュードの厳しい審査を通ってきた者達ばかりなのだから。


ぐしゃり、と白い薔薇を手のひらで押しつぶす。


「アルフォンス……!」


セリスの美しい顔が、憎悪に歪んでいた。

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