Under the ROSE
6
それは、根底を揺るがす衝撃だった。
表向き心優しい皇太子と繊細で儚げな憐れな皇女は、周囲から見れば仲の良い姉弟に見えただろう。
しかしその実、アルフォンスの後ろに控える妃殿下はセリスを嫌い、セリスはまた、王侯貴族に利用されようとして争いの種となっていた。
毒を盛るほど互いの存在を疎ましく思うことはあっても。
まさか、その逆の感情をぶつけられるとは。
微塵も思っていなかった。
カチャリ、とカップとソーサーのぶつかる音がしてセリスは我に返った。
レゼッタ姫が青い顔をして肩を震わせている。
「殿下……」
セリスは頬に触れるアルフォンスの手をそっとはずすと、小さく首を振った。
このままではレゼッタ姫との婚約まで解消することとなり、隣国との強い結びつきまでもが消える。
そうすれば大陸に攻め込まれる。
それではいくら玉座を手に入れても無意味だ。戦火に巻かれる国を手に入れても、自由にはなれない。
「殿下のお話は分かりました……。ですから、お座りになって。レゼッタ様が震えていらっしゃるわ。こんなお話、姫の前でするものではありません」
なるべく落ち着いた口調でそう伝えると、アルフォンスが小さく息を吐き出したのが分かった。
表向き心優しい皇太子と繊細で儚げな憐れな皇女は、周囲から見れば仲の良い姉弟に見えただろう。
しかしその実、アルフォンスの後ろに控える妃殿下はセリスを嫌い、セリスはまた、王侯貴族に利用されようとして争いの種となっていた。
毒を盛るほど互いの存在を疎ましく思うことはあっても。
まさか、その逆の感情をぶつけられるとは。
微塵も思っていなかった。
カチャリ、とカップとソーサーのぶつかる音がしてセリスは我に返った。
レゼッタ姫が青い顔をして肩を震わせている。
「殿下……」
セリスは頬に触れるアルフォンスの手をそっとはずすと、小さく首を振った。
このままではレゼッタ姫との婚約まで解消することとなり、隣国との強い結びつきまでもが消える。
そうすれば大陸に攻め込まれる。
それではいくら玉座を手に入れても無意味だ。戦火に巻かれる国を手に入れても、自由にはなれない。
「殿下のお話は分かりました……。ですから、お座りになって。レゼッタ様が震えていらっしゃるわ。こんなお話、姫の前でするものではありません」
なるべく落ち着いた口調でそう伝えると、アルフォンスが小さく息を吐き出したのが分かった。