Under the ROSE
それは、根底を揺るがす衝撃だった。

表向き心優しい皇太子と繊細で儚げな憐れな皇女は、周囲から見れば仲の良い姉弟に見えただろう。

しかしその実、アルフォンスの後ろに控える妃殿下はセリスを嫌い、セリスはまた、王侯貴族に利用されようとして争いの種となっていた。

毒を盛るほど互いの存在を疎ましく思うことはあっても。

まさか、その逆の感情をぶつけられるとは。

微塵も思っていなかった。


カチャリ、とカップとソーサーのぶつかる音がしてセリスは我に返った。

レゼッタ姫が青い顔をして肩を震わせている。

「殿下……」

セリスは頬に触れるアルフォンスの手をそっとはずすと、小さく首を振った。

このままではレゼッタ姫との婚約まで解消することとなり、隣国との強い結びつきまでもが消える。

そうすれば大陸に攻め込まれる。

それではいくら玉座を手に入れても無意味だ。戦火に巻かれる国を手に入れても、自由にはなれない。

「殿下のお話は分かりました……。ですから、お座りになって。レゼッタ様が震えていらっしゃるわ。こんなお話、姫の前でするものではありません」

なるべく落ち着いた口調でそう伝えると、アルフォンスが小さく息を吐き出したのが分かった。

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