Under the ROSE
深く息を吐き出し、アルフォンスはセリスを見つめた。
「私は、皇太子などではありません。本当の皇位継承者は姉上、貴女だけです」
セリスは目を見開いた。
「本当は……私の方が、姉上の前になどいられない、卑しい身分なのです」
「……どういうことですか」
声が震えていた。
心を落ち着けようと、更に手を強く握り締める。
「母上は御子の産めない体でした。……つまり私は、母上の子ではない。もちろん、父上の子でもない。母上が自分の皇子を王に据えるために連れてきた、どこの誰とも分からない捨て子なのです」
「それは、本当の話ですか」
「本当です。父上が亡くなる時に、密かに私に話してくださいました。父上は気付いていたのです。私が本当の皇子ではないと。それでも何も言わず、母上とともに王宮に置いて下さったこと、感謝しています」
アルフォンスはジッとセリスを見つめながら、ゆっくりと話を進める。
「だから私は、貴女に皇位継承権をお返しするつもりでした。母上は反対されましたが、私の決意は変わらなかった」
妃殿下のセリスを見るあの目は、真実を知っていたからなのか……。
アルフォンスは皇位を継ぐつもりはなく、セリスのみがその権利を持っていることを知っていたから……。
そう思うと、妃殿下の態度に納得がいった。