Under the ROSE
「ですが……私は、貴女に、逢ってしまった……」

アルフォンスの瞳が切なげに揺れる。

「リュードとの婚約発表の席で貴女を見た時、一瞬で私の心は貴女に奪われてしまった。それまでは皇位をお返しするつもりだったのに、このまま城を去れば二度と貴女に会うことは出来なくなると……愚かなことを、思ってしまったのです。
結果、貴女を醜い皇位継承争いに巻き込むことになり、辛い思いをさせてしまった。
だからもう……皇位をお返しして、この城を出ることにしました。姫には悪い事をしてしまいましたね……」

「殿下! このままで良いではありませんか!」

レゼッタ姫が立ち上がる。

「セリス様は皇位など必要とされていないわ、そうでしょう?」

セリスはその言葉には首を振れなかった。ただ、戸惑いの表情を見せた。何も知らなかった愚かな姫を演じて……。


──演じて……いるのか。


本当に動揺しているのか。

もはや自分にも分からない。


「我が国と強い締結を結ぶためにも、この結婚はなくてはならないものです! このことはわたくし達だけの秘密になされば良いのです。殿下が誰を想おうと、わたくしは構いませんっ……!」

「姫、それではいけません。貴女と、貴女の国を愚弄することになる」

「それでも構わないと、わたくしは言っているのです!」

激しく感情をぶつける姫を、呆然と見つめた。

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