Under the ROSE
──そんなこと、させるものか。


怒りのためか冷静さを取り戻したセリスは、アルフォンスを静かに横たえると立ち上がった。

「姫」

レゼッタ姫は近づいてくるセリスに後ずさりしたが、後ろの柱にぶつかって逃げ場を失った。

「貴女は、取り返しのつかないことをしてしまった。それは分かりますね?」

「あぁっ……」

震えるレゼッタ姫の頬にそっと手を当て、セリスは茶色の瞳を見つめた。

「貴女は我が国の皇太子を殺害してしまった。それは揺ぎ無い事実」

「いやあああっ」

セリスの手を振り払い、激しく首を振って叫ぶレゼッタ姫。しかしセリスは慌てることなく、今度は両肩に手を乗せる。

「良いですか。それによって、エスタとウィンドルは敵対しなければならなくなるのです」

「駄目よ! 駄目よ、そんなこと!」

「ええ、そんなことをさせるわけにはいきません。貴女も皇女ならば、ご自身の父上や国民を窮地に追い込みたくはないでしょう?」

その言葉に、レゼッタ姫は初めてセリスの目を見た。


──やはり、皇女だ。


セリスは柔らかく微笑んだ。

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