Under the ROSE

賑やかな宴も終わり、いつもの日常が戻ってくる。

セリスは王城のはずれにある西の宮に住んでいた。

他からは完全に隔離され、独立した小さな建物。しかし、西の宮を覆う真っ青な薔薇は見事だった。

垣根のように茂る頑丈な茎と棘のある葉はまるで有刺鉄線のようだが、ここで生まれ育ったセリスにとっては荒んだ心を慰めてくれる癒しの空間だ。

甘い芳香を放つ青い薔薇を部屋の中にも飾り、毎日飽きることなく眺めていた。


「私が皇位を継いだ暁には、王城もお前たちで満たしてやろう」


皇位を継げば、自由になれる。

その時は、青い薔薇も一緒だ。

セリスはそう心に誓っていた。



広い食堂、広いテーブル。

そこにも青い薔薇を飾り、一人でテーブルにつく。

隣の部屋には毒見役が控え、セリスが口にするものは全てチェックされていた。これも幼い頃から変わらぬこと。

父である皇帝は、妃殿下がこの青薔薇の宮にセリスを閉じ込めるのを黙って見ていた。

その方がかえって安全だと思ったのだろう。そうして影からセリスを護っていたのだ。

その父も崩御し、現在はリュードの采配によってこの宮に出入りする人間は限られている。

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