sugar
『沙羅、大丈夫?』
「な・・・なんとか。」
さっき電車が来て、人に押されるようにして電車に乗った俺らは、満員電車に苦戦していた。
俺は背が高いほうだからまだいいが、沙羅はちょっとつらそうだ。周りを沙羅よりも背が高い人に囲まれているため、顔の周りの隙間は、少ししかない。
こんな満員の中、俺らはしゃべれるわけもなく、目的の駅まで15分くらい、だまって乗っていた。
<まもなくー桐ヶ滝ー桐ヶ滝ー。お降りの方は・・・>
『空くん、あたし行くね。』
「おう。気をつけて行けよ。」
にこっと笑い、じゃあまたねって手を振って電車を降りてく沙羅を、俺はずっと見つめてた。ドアが閉まったあとも。
なんで俺ってこんなに沙羅が好きなんだろう。
・・・前にそう和香に言ったら、笑われたことがある。
<そんなの知ってたらすごいわよ。恋っていうのは、知らないうちに好きになっちゃうことなんだから。気づいたら目で追ってた、とかね。>
確かにそうだと思う。和香は勉強は出来るほうではないが、人生論は結構しっかりしてる。俺にもその能力を分けてほしいくらいだ。
そういえば、沙羅も和香に似てるな、と思う。変なところでしっかりしてたりする。あの2人って意外と気が合うんだな。
そんなことを考えながら、高校へ向かった。