性悪魔王と妄想モンスター(5/19 63P公開)





美夜さんが本当にギブアップした。
ここから1歩も動かない。


目の前を何人もの生徒が通り過ぎて行く、先生たちに声をかけられて大丈夫ですと答えるのにもそろそろ飽きた。



「美夜さん…」

「歩きたくない」



口を開けばこれである。

ワタシはスマホのフォルダのむくろ君コレクションを眺めているのだけど、もう1時間はこの状態の気がする。登ってくる生徒も途切れて、辺りには誰もいない。



最後尾を歩く先生たちがまだ通っていないから大丈夫だとは思うけど、そろそろ美夜さん動かないとヤバイですよ。



「なんで圏外なの!」


「合宿所は電波通ってるてよ」



いつもスマホをいじってる美夜さんからしたらこの状況は辛いであろう。




「イチコおんぶ」


「潰れるわ!」



スタイルの良い美夜さんはもちろんワタシより高身長だ、ワタシがおんぶできるレベルではない。申し訳ないが。




「…わかった、荷物持つから少しは歩こ」



ワタシは美夜さんの足元に置かれてる荷物を肩にかけた。



美夜さんはしぶしぶ立ち上がる。


すると、登ってくる方向に人影が見えた。すぐにそれが誰なのか分かる。




「哉白っ!!!」



猫背のひょろひょろと、おじいちゃん先生だ。




「何、おめーら登ってないんか」



ワタシたちの所まで登ってくると、哉白はワタシの持つ荷物を嘲笑いながら声かけてきた。



「あー佐咲?」


美夜さんも哉白に気づいて俯いていた頭を上げた。



おじいちゃん先生は確か最後尾を歩くと言ってた気がする。



「俺で登ってくんの最後やで」



やっぱり。おじいちゃん先生はどうしたんかい、と心配そうにワタシと美夜さんの顔色を伺ってくる。




「根性ないだけです」


「っ、はは」



「美夜さんがだからね!?」


哉白め!ワタシを見て笑うのやめろよ!





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