終わりの世界の君と僕
開け放たれた玄関の扉から吹く夜風が、うららちゃんの花の香りと、血と腐った臭いを運んできた。
スンスンと鼻を鳴らして、おえ、と吐くマネをする。
相変わらず健康に悪そうな空気の味だ。
うららちゃんが出ていった扉の先に、月が浮かんでいた。
月に照らされて、塀をよじ登るうららちゃんの姿が見える。
きっとあの塀の向こうには、たくさんのバケモノたちが、お腹をすかせて待っているんだろう。
月の光に反射して、私の長く、白い髪が銀色に輝いた。
「またね、うららちゃん」
私の呟きは、夜の学校の乾いた空気に吸い込まれて、消えた。