明鏡止水。
「ねぇ…ねぇって」



右斜め後ろから女の声が聞こえてきた。
今まで女に声をかけられることは何回もあったが、授業中に声をかけてくる奴はいなかった。


僕は不思議に思いながらも声が聞こえてきた方を向いた。




「このシャープペン、あなたのでしょう?」



…なるほど。
どうやら気づかないうちに右手に持っていたシャープペンを落としてしまって、彼女の席のほうに転がっていってしまったみたいだ。




「あぁ…ありがとう」



礼を言うと、何事もなかったかのように教科書に目を落とした。
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