星々が織り成す世界の光
「あっと…急にごめんなさい」


リヒトはなぜか握ってしまった手を離す


知らない人なのに自分とは対象的な黒く真っ直ぐな肩までの髪と細い黒目が懐かしく感じた


「そっか。リヒトは僕のこと覚えていないんだったね」


リヒトと同じくらいの年の男の悲しそうな顔はなぜかリヒトの心を抉らえた



「俺のこと知ってるんですか?」


「よーく知ってる。親友だったからね。でも…」


男はリヒトと親友だったと言うがもちろん記憶にはない


「リヒトがあの時と気持ちが変わらないなら僕は敵だ」



あの時がいつなのか、その時の気持ちなんてものも全部覚えていないのだ


そんなリヒトに彼は本をさしだした
見たことないはずの文字なのにリヒトの記憶はそれを知っていた


「地の本」

その本の題名を見た事の無いはずの文字をリヒトは無意識に読んでしまった



「…あの魔法でも文字の記憶は消せないのか」



男の言葉にリヒトが首をかしげると男は何かを隠すように笑って



「この国でなにをしているのか読めば分かるかもね」


「あのあなたの名前は?」


リヒトは何かこの男を思い出すきっかけになるかとおもい聞いた


「フィンスター」

そう言って男は闇に溶けるようにその場を去っていった


1人残されたリヒトは昔の約束、フィンスターという名前…今まで断片てきに覚えているもの、最近知った情報で思い出そうとするが、何かに消されたかのように記憶は真っ白だった



相手は知っているとはいえ、リヒトから見れば今は他人である男から貰った本を見た



これを見れば何かが分かるのだろうかとリヒトは本のページを開いた







その頃フィンスターと名乗る男はとある場所に来ていた



「星の使い手に手を貸すつもり?」



黄色い長い髪をなびかせなから女は言った



「これは僕なりの決着です。それにあの本をあげた所で僕達が困ることはありませんし」


「そうね。それより暇だし楽しいことしない?」


女は大きい胸と露出度の高い服でフィンスターに近づく


「僕にあなたの魔法は効きませんから」



「釣れないわねー。雷雲の国の藩主なんてイチコロだったのに」


女は面白くなさそうにそういうと窓辺に歩いていく



「へぇーアリサがこっちに向かってるわ。ディゴスはもう私のものなのにあの子も頑張るわね」


ディゴスは雷雲の国の藩主のことだ
女は高笑いをしながら去っていった




「約束守れなくてごめん」


フィンスターはそのまま背を向けてそこを去った


彼のなびいたマントには悪魔の絵が刻まれていた
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