大きな小野君。【完結】
本当のコト。
「携帯忘れちゃってさ、取りに戻って来たら……ばっちしあれ、聞こえちゃった」
苦笑いしながら言葉を濁す彼。
ああ、……あれ聞いてたんだ。
「大は?一緒じゃなかったの?」
「……一緒、でした」
「でした?」
「……小野君と帰る事になったから、美月に一言伝えたくて、戻ってきたら…」
「あれを聞いちゃったと?」
「……」
コクリと頷く私。
そっか、と悲しそうに微笑む彼。
「あ。俺の名前、俺ね、歩。香坂歩」
「……香坂君」
「あー歩がいい。歩」
「歩、君」
「それで」
へへっと笑うと、スッと彼の手が私の頬に伸びた。
急に触れた温度に私はびくっとなる。
「泣きそうな顔してる」
「……」
「紀花ちゃん、だっけ」
「……」
それに小さく頷く。