スノードロップ
カタンカタン・・・・カタンカタン・・・・・



一定のリズムを刻みながら電車が動く。



6時55分。



私はこの時間が一番好きだ。
どうしてかって?



それは・・・・・・。



私はチラリと対角線上に座る彼を見た。
車内には5~6人しか居なかったが、彼の存在感は抜群だった。



下を向きながらスマホを弄る彼、長いまつげで縁取られている目と、サラサラとゆれる黒い髪、キャラメル色のブレザーをゆるく着こなしている。



あの、色と金色のボタンのブレーザーに、白と蒼のネクタイは、東京でも有名な私立。
”白鳥高校”
私たちの間では”白中”と呼ばれていた。




(目が合わないかな)




そんなことを密かに思っている。
けれど、彼はずっとスマホを弄っていて顔を上げることがほとんど無い
心の中にある小さな恋の蕾はなかなか開かないで居た。



私はいつもどおり、お気に入りの本を取り出して、座席に座って読むのだ。
けれど、そんな静かな時間は長くは続かない



プシューっと音を立てて電車が止まる




ガチャンとドアが開くと多くの人々が乗り込んでくる。
そうすると、彼の姿は埋もれて消えていってしまうのだ。

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